オノマトペ大臣。この奇妙な名義のラッパーをご存じだろうか? オノマトペ大臣は、現在thamesbeatとのユニットPR0P0SEやソロで活躍するラッパーで、Web上を中心に数々の作品をリリースしている。
彼は自らを「会社員ラッパー」と呼び、平日は一般企業に勤務している。今回はオノマトペ大臣が“普通であることのハードコア性”という独自の美学を提唱していることに注目したい。
◎オノマトペ大臣は、あの名曲のリリックの生みの親
オノマトペ大臣の関わった楽曲で、最も有名なのはtofubeatsの「水星 feat,オノマトペ大臣」である。この曲の印象的なフック“めくるめくミラーボール乗って水星にでも旅に出ようか いつか見たその先に何があるというの”は、オノマトペ大臣によるもの。
ちなみに制作現場はカラオケボックスで、tofubeatsがトイレに行っている間に完成したそうだ。
◎大学卒業して就職することこそ、ヤバい
「水星」を作る以前の大学在学中から、tofubeatsとネットラジオを配信したり、ラッパーとして楽曲を制作したりと、クリエイティブな活動を行ってきたオノマトペ大臣は、当時から「普通であることのハードコア性」を提唱していたそうだ。
彼にとっては、「大学に行って、普通に経済を勉強すること」が既にハードコアな活動。そして「大学卒業後、普通に企業に就職して働くこと」こそが、真にハードコアな生き方だという。
その独自のハードコア観に影響を受け、盟友tofubeatsは制作する音楽ジャンルを、テクノとヒップホップからJ-POPに領域を広げたほどだ。
◎「普通」から生まれるクリエイティブ
音楽に限らず、クリエィティブな世界においては、制作者はいかに過激でヤバいかを競いがちである。
しかしその過激さの競争にそのまま乗らず、あえて普通さを武器にする考え方は、ファッション業界が「いかに人と違う奇抜なものを身にまとうか」という競争の果てにたどり着いた「ノームコア(究極の普通)」というトレンドと似ているものがある。
彼は普通の会社員として日常を生きることで作詞家としてのクリエイティビィティを高めている。Maltine Recordsからフリー音源として配信されているアルバム『街の踊り』では、街を生きる人々の「何気ない日常」の風景を見事に切り取ったオノマトペ大臣のリリックを堪能することができるので、ぜひチェックしてほしい。