「ミッション:インポッシブル」を超えた大ヒットヒップホップ映画の舞台は“全米一危険な街”

2015.09.11

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80年代末には「全米一の犯罪率」となったコンプトンってどんなところ?

1980年代末に伝説となったヒップホップグループ「N.W.A.」の伝記映画「Straight Outta Compton」がトム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」の最新作を抜き、公開初週の興行成績で全米1位に輝いた。そしてトータルの興行収入が早くも1億ドルを超えたという。

N.W.A.はイージー・E、ドクター・ドレー、アイス・キューブらを中心に結成されたヒップホップクルーで、ドクター・ドレーはソロラッパーとしての活動、また2014年にアップルに売却された「b」のロゴマークのヘッドホンブランド「Beats by Dr. Dre」の設立者としても有名だ。

N.W.A.は1988年に発表したデビュー・アルバム『Straight Outta Compton』がアメリカで300万枚を記録する大ヒットを飛ばし、一躍大スターとなった。なぜデビューアルバムで、いきなり大ヒットを飛ばすことができたのか。その秘密は彼らの出身地が、ロサンゼルスのコンプトンであることに隠されている。

コンプトンはN.W.A.が活躍した80年代末には全米一の犯罪率として知られ、また2006年には「人口10万人以下の街で最も危険な街」に指定されたこともある。現地のマクドナルドの店舗を見れば、その危険さは一目瞭然だ。コンプトンのマクドナルドは、レジカウンターの一面が防弾ガラスに覆われており、一部に付いたガラス製の引き出しを介して商品とお金をやり取りする。つまり店員とは防弾ガラスを介さなければ、接することができないほどに「住人」は警戒されているのである。

 

「危険さ」から生まれたコンプトン発の「ギャングスタラップ」

なぜコンプトンは、それほど危険な場所なのか。ひとつの原因は貧困である。コンプトンはいわゆるスラム街(ゲットー)であり、非常に貧しい人々が劣悪な条件の中で多数住む地域だ。そのため金目当ての路上強盗や家屋に押し入っての強盗殺人が頻発する。そのうえ、コンプトンには全米の2大ストリートギャングの「クリップス」と「ブラッズ」が共に縄張りを持っている。ストリートでは両ギャングチームの収入源となるドラッグや銃が公然と取引され、街に溢れていた。さらにちょっとした小競り合いからストリートギャング間の抗争が勃発し、殺人とその報復行為が連鎖している危険な状態がコンプトンの日常なのだ。

しかしその「危険さ」こそが、80年代末から今に至るまで、コンプトン発のヒップホップがリスナーを魅了してきた理由である。今回映画化されたN.W.A.は、コンプトンのギャングの日常をラップにし、「ギャングスタラップ」というジャンルを生み出すことでスターになったからだ。また、現在の「西海岸ヒップホップの王者」と言われるケンドリック・ラマーも、同じくコンプトンの出身だ。しかし彼は「ギャングスタラップ」でスターとなったわけではない。ケンドリックはアルバム『Good Kid m.A.A.d City』で、N.W.A.が歌わなかったコンプトンの側面、つまりギャングの抗争に苦しみ、命を落とした善良な住民たちの気持ちを「Good Kid m.A.A.d City(狂った街の良い子)」であったかつての自分の視点から歌うことで、ブレイクを果たしたのだ。

現在のコンプトンはかつてよりは治安が回復したが、黒人の代わりにヒスパニック系住民が増加することで、かつてとは違う地域問題が起こり始めている。はたして、今後はどんな音楽が「マッドシティ・コンプトン」から聴こえてくるのだろうか……。

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