Base Ball Bearが音楽過渡期で“表現”について考える、エクストリーム・シングル

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Base Ball Bear

シリーズ“三十一”始動。“エクストリーム・シングル”として、3ヵ月連続でシングルを発表するBase Ball Bearが第1弾「それって、for 誰?」part.1を発売する。この企画の意図は? “for 誰?”とは何を差すのか? メンバーを代表して小出祐介(g、vo)が語る。

INTERVIEW & TEXT BY 永堀アツオ


フィジカルの価値観をちゃんと考えなきゃいけない

──3ヵ月連続で“エクストリーム・シングル”がリリースされます。まず、この“エクストリーム・シングル”という言葉、企画の成り立ちからお伺いできますか?

小出祐介 ぶっちゃけた話、最初はスタッフから「ゆくゆく発表されるアルバムのプロモーションのひとつとして、3ヵ月連続でシングルを出しませんか?」という提案をもらったんですよね。アルバムのリリースまでロングプロモーションもできるし、バンドが常に動いてることを見せる口実にもなるよねっていうところから始まって。でも、それってシングルが売りにくい今だと前時代的というか、時代錯誤なんですよね。

──昔であれば、3ヵ月連続でシングルをリリースすること自体が企画になっていたけど、今はそうじゃない、と。

小出 そう、ロングプロモーションをしていくという発想自体は悪くないんですけど、3ヵ月連続シングルだけだと意味がないから、なにかしらの意味づけが必要だなと思って。ちょうど日本でも音楽ストリーミングサービスが始まったじゃないですか。これからよりフィジカルとしてのシングルCDの在り方がかなり変わってくるだろうなというのは誰でも想像できることで。まぁ、この5年間はずっと前時代とこれからの時代の過渡期だなって思ってるんですね。だいぶ文明が変わってきてるから、それに合わせて文化も変容するんじゃないかなって思うし、フィジカルの価値観をちゃんと考えなきゃいけないなとも思っていて。そんな時期だからこそ、シングルをただ音源が記録されているディスクとして売るよりは、フィジカルそのものをアイテムとして持っていたいものにしたい。かつ、アルバムまで待てばいいかなと思ってる人たちでも手を出したくなるようなものにしたいということで、“CD+DVD”という形態はみんなやっているので、「シングルで“CD+CD”はできないですか?」っていう話をしたんですよ。しかも、大容量の(笑)。

“CD+CD”でシングルというのは新しくていいんじゃないか

──Disc 2にはCDの容量いっぱいいっぱいのライブ音源(2015.6.13「日比谷ノンフィクションⅣ」@日比谷野外大音楽堂より全12曲)が収録されています。

小出 これくらいの容量が入ってるともうライブアルバムなわけですよ。ちゃんと調べてもらったら、新曲じゃなく既発曲であればボーナスディスク扱いできるということがわかって。Disc 1は完全に新曲ですけど、日比谷野外大音楽堂でライブでやった既発曲のボーナスディスクをつけた“CD+CD”でシングルというのは新しくていいんじゃないかっていうことで、“エクストリーム・シングル”という言葉が誕生した感じですね。

──ライブアルバムが付いてる“過剰なシングル”っていうニュアンスですよね。Disc 1にはアルバムの特報と、野音で披露した新曲「それって、for 誰?」part.1が収録されてますが、この新曲も過激(エクストリーム)ですよね。

小出 この曲は、“それって、for 誰?”っていう言葉が先にあったんですね。ツイッターで、一般の人が「今日は久々にメンテナンスデーでした」ってつぶやいたりするじゃないですか。「この後、ネイルに行って……」とか。僕からすると「お前のメンテナンスデー、for 誰(に向けて発信してる)なんだよ!」と。

何段も階段を登って得た表現ライセンスを持ってる

──あはは。モデルさんや女優さんならわかるけどってことですか?

小出 そうです。だから、最初はただの悪口だったんですけど(笑)、その言葉の強さに引っ張れる形で曲を書いていって。ただ批判してるだけだとつまらないし、曲自体が「それって、for 誰なんですか?」って言われてしまうから、ちゃんと批評として成立したものじゃないといけない。そうなると、俺がなんで「それって、for 誰?」って思ったかっていうところを突き詰めていくわけですけど。

──SNSについてどう考えているかっていうことですよね。

小出 そう。SNSというのは、言い方を変えるとすごく敷居の低い表現ツールなんだなって思って。僕らは、表現の仕事を始めるにあたって、必ず一段、二段と敷居を登ってきたんですね。バンドマンであれば、まずは楽器を買わないといけない。お小遣いを貯めるためにバイトをするのか、親にねだり倒すかはわからないけど、どうにか楽器を手にした後は練習して、バンドを組むためのメンバーを見つけて。で、バンドでの練習をしたら、今度は観てくれる人を見つけないといけない。その段階でいよいよ表現という領域に入ってくるんですけど、今はスマホを買えばデフォルトでツイッターが入っているから、アカウントさえ作ればすぐに世の中に向けて発信できる。それが、敷居の低い表現ツールなのかなって思ったせいで。僕らはやっぱり……実際はないんだけど、何段も階段を登って得た表現ライセンスを持ってると思うんですよね。

わりとヒップホップに近い精神性なのかなって

──地元のライブハウスに出るのもオーディションがあるし、事務所が決まって、レコード会社が決まって、インディーズからメジャーへ……という敷居がいくつもあるから。

小出 自分たちをどんどん高めていって、級を上げてきたというか。9級から始めて、初段になった感覚に近いと思うんですね。でも、今は誰でも自由に表現できる。誰にでも表現欲求はあるし、表現すること自体は別に悪いことではないんだけど、SNSでの表現ばかりになってしまうと、元々の意味やイズムを失って、だんだん形骸化してしまうと思うんですね。そういうところから、俺がSNSに対して抱いていた違和感というのは、そもそも“表現 for 誰?”なんだなっていうことに行き当たって。だから、この曲は、いわば“表現 for 誰?”のSNS編だと思っていただければいいかなと思います。

──その問いに対する答えもちゃんと歌ってますね。最後に、なんのために歌うのかっていうことを明確に提示してます。

小出 批評の文章であれば必要ないんですけど、音楽として、メッセージとして表現する場合は自分のスタンスを言わないのはズルいし、ちゃんと盛り込まないといけないなと思って。いちばん最初に「この曲こそ“for 誰”なんですか?」というリプライを防ぐための先手も打ってますけど(笑)、最後のサビでちゃんと自分で答えてる。自分自身もメタで捉えつつ、自分のスタンスも明らかにするっていう意味では、わりとヒップホップに近い精神性なのかなって思います。

いろいろ出てくるんだなっていうこともわかりましたし(笑)

──歌ってないことを歌っているという技法を使ったアルバム『二十九歳』のあとに、これだけ強烈なメッセージ性を持った曲がくるのはちょっと意外な気もしました。その前までの、物語性を作っていた流れを含めても。

小出 言いたいことを言ってますからね。『二十九歳』は極めて自分語りのアルバムで、言葉にすることがすべてではない気持ちを歌ったアルバムだったので、その反動もあると思いますね。今回は、最終的には理念の話もしてますけど、心の奥底というよりは自分の主義・主張で、しかも、かなり引いて、俯瞰で見てる曲。自分を表現するっていうなかではなかなか饒舌にはなれなかったけど、外に対して言いたいことはいろいろ出てくるんだなっていうこともわかりましたし(笑)。逆に言えば、しっかりと言葉にするっていうことをやった感じですね。

──それが、ヒップホップの精神性ということですよね。

小出 そうですね。昔の自分であれば、言い方を変えたり、しっかりと例えを作ったり、なんなら寓話に置き換えていたと思うんですね。“まどろっこしいから、直接言いますわ!”っていうのが自分のなかでアリになってるのが、今回やっていて気持ち良かった。置き換えるという作業はきれいなベールを重ねていくようなもので、それをやる醍醐味もわかっていつつ、ベールを取り払うことができて良かったですね。

──続く第2弾、第3弾にも同じエッセンスが漂ってます?

小出 第2弾「文化祭の夜」は“趣”というていをファンクでやっていて、第3弾「不思議な夜」は記号で埋め尽くされたラブソングに対して、自分なりの本当に恋愛が始まるのはこういうときじゃないですか? っていうのを曲として形にしています。そういう意味では、“表現 for 誰?“というテーマは常に念頭にあるし、シリーズ“三十一”という名もだんだん明らかになっていくと思いますね。

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リリース情報

第1弾エクストリーム・シングル
2015.08.05 ON SALE
SINGLE「それって、for 誰?」part.1
EMI Records

150805-YS-231002[完全生産限定盤/2CD]¥1,800+税

第2弾エクストリーム・シングル
2015.09.02 ON SALE
SINGLE「文化祭の夜」
EMI Records

150805-YS-231003[完全生産限定盤/2CD]¥1,800+税

第3弾エクストリーム・シングル
2015.10.07 ON SALE
SINGLE「不思議な夜」
EMI Records

150805-YS-231004[完全生産限定盤/2CD]¥1,800+税

詳細はこちら


ライブ情報

Base Ball Bear Tour「三十一歳」
詳細はこちら


MUSIC ON! TV(エムオン!)
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音楽チャンネルMUSIC ON! TVのプログラム「サキドリ!」にBase Ball Bearが登場!

「サキドリ!」
[初回放送]毎週月曜~金曜 24:00~24:30
[リピート]毎週火曜~土曜 7:00~7:30
※MUSIC ON! TVはスカパー!で放送されている音楽チャンネルです。
※8月は夏休み特別編成のため、放送日時が変更となります。毎週月曜~金曜 19:00~のリピート放送はございません。

【月刊 Base Ball Bear】
番組が注目するアーティストを1ヵ月通してご紹介! バラエティに富んだ企画や作品についてのインタビューなど、週替わりで様々な内容・⾓度からアーティストの魅⼒をお届けします。

【第1週】8/03(月)~8/07(金)
【第2週】8/10(月)~8/14(金)
【第3週】8/17(月)~8/28(金)
【第4週】8/31(月)~9/04(金)
※内容は週替わり/各1週間、毎時同じ内容をオンエア


プロフィール

ベースボールベアー/小出祐介(g、vo)、関根史織(b、cho)、湯浅将平(g)、堀之内大介(ds、cho)。2001年、同じ高校に通っていた4人のメンバーにより、学園祭に出演するため結成。2006年に1stミニアルバム『GIRL FRIEND』でメジャーデビューを果たす。

オフィシャルサイト
Base Ball Bearシリーズ“三十一”特設サイト

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