「沈黙-サイレンス-」をガチ観賞したアーティスト3人は何を感じたか……

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は、遠藤周作の原作を巨匠マーティン・スコセッシが映画化に臨んだ話題作「沈黙-サイレンス-」へ。遠藤周作を愛する小出部長は感想を話すことに複雑な気持ちを抱いているようです……。

活動第32回[後編]「沈黙-サイレンス-
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

小出部長が作品の咀嚼に戸惑っている[前編]はこちら

ちょっと日本のこの特異な感じなんなんですか?

小出 もうひとつ、映画では少し引っ込んでいる気がした原作のエッセンスとしては、“キリスト教の日本での変質”ですね。宗教という形、信仰の変質っていうことに原作はもっと突っ込んでいて。

井上筑後守(イッセー尾形)や通辞(浅野忠信)とロドリゴが宗教問答みたいになるじゃないですか。あの論議がもっと濃いんですよ。そして、決定的なことを井上が突きつけてくる。

──それこそ“ロスト・イン・トランスレーション”(翻訳のズレ)問題ですね。キリスト教を輸入することで、すべてが日本流になっちゃうという。フェレイラ師も「この国(日本)は沼地だ。我々の植えた苗は育たない」と語ります。

小出 日本のキリシタンたちが言葉を捉え間違えるんですよね。“SON”って言っていたのが、日本では太陽の“SUN”に意味が変わっている。自分たちの信仰している神様と、こっちの信仰先が勝手に変質してしまっている。

レイジ 言い間違えたのもありましたよね。パライソ(天国)の意味とか、ぜんぜん違う感じで伝わっちゃって苛立ってる描写もありましたね。

小出 そうそう。あれって実はすごく大事なポイントなんですよ。

レイジ それこそキリスト教の変質化みたいなものって、最後には悟りを開くというふうに、キリスト教が仏教っぽくなってしまうというか。

小出 そうそう。自分たちの解釈で歪めちゃうんだよね。雑種の神様を生み出しちゃってる。ロドリゴからしたら、殉教していった人たちが“何に殉教したのか”っていうのも考えてつらいだろうなぁ。

レイジ 結局、どんな宗教も、日本という土地だとこうなっちゃてしまうということですよね。あと、この日本にいくら種をまいても育たない沼地だという表現は、音楽などにも結びつくと思います。

小出 それ、原作を読むとすっごく思うんだよね……。ガラパゴス化ってやつだよ。

──まさに宗教だけでなく、文化全般の話ですね。

世武 島国感がある。それをあの時期に遠藤周作が感じ取ったのがすごいと思う。

レイジ 何年前の本なんですか?

小出 1966年だから、50年前。

世武 ほんとすごいよ。今だから感じ取る人はいるじゃん。ちょっと日本のこの特異な感じ、なんなんですか? みたいな。

小出 今でこそ日本独自のガラパゴス進化がちょっと海外から面白いと思われているところはあるけど、日本の芸能とか音楽の在り方とか、海外のショウビズから見たら結構独特だと思うんだよね。

SNSでもそうじゃん。海外だとFacebookが主流で、Twitterとかはだいぶ下火になってきているのに、日本ではどちらかというとTwitterのほうが多いとか。

──実名より匿名カルチャーのほうが強い。やっぱり日本って特殊な国だなっていうね。

小出 逆カルフォルニアロールですね。

レイジ 良くも悪くも、ですね。

すごい観て良かった。原作も絶対に読みたい

世武 ある種、主人公ロドリゴの世界ってめっちゃきれい。まあ、潔癖というか。神がいて自分がいて、他の人たちがいる……きれいすぎる感じだと思ったら、わりと普通に軽蔑したりとかしてる

例えばキリシタンなのにすぐ転んじゃう、すぐ人を裏切っては許しを請うキチジロー(窪塚洋介)に対して「悪人の美しさすらない」みたいなこと言うじゃないですか。「なんだよ、こいつ?」みたいに、明らかに侮蔑している描写とかあったじゃん? あれだけ清らかで博愛的な人なのに、そういう軽視はするんだ、みたいな。

小出 そういうところにも、ロドリゴが揺さぶられているのを感じますよね。で、キチジローには同じ悪人でも「バットマン」シリーズのジョーカーじゃないけど、突き抜けて逆に美しいみたいなそういう崇高さはなくて、むしろ「ゲゲゲの鬼太郎」のねずみ男みたい。

──ある意味、いちばん人間臭いキャラクターなんですよね。人間の弱さや狡さを象徴化した人物像。

小出 日本で迫害されていくロドリゴが自分をキリストになぞらえ出したときに、キチジローのことをユダ的に捉えていくんですね。物語のレイヤーとして、キリストとユダの関係性の反復がある。これもまた重要なモチーフなんですけど、ただ、キチジローは原作のイメージだともっともっと汚い(笑)。

──日本人からすると窪塚洋介に華を感じてしまうっていう(笑)。でもすごい良い演技でしたよね。

世武 本当にそう思う。

レイジ 日本人キャストはみんな良かったです。小松菜奈(村人モニカ役)さんとかも。

小出 「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の眩しすぎる小松さんを観たあとだったから、余計に振り幅がすごかった。モキチ役の塚本晋也さんが水責めされるところは、マジで死んじゃうんじゃないかと思ったよ(笑)。間違いなく波にのまれてたもんね。

レイジ ガチでキツそうでしたね。

小出 ねぇ。たぶんあの波の強さは、セットじゃできないよね。スコセッシもやることハンパねえなって。

世武 そのへんの本気度も含めて、私はすごい観て良かった。原作も絶対に読みたい。

小出 答えがあるものではないけど、受け取り手側が“何を信じているのか”が浮き彫りになるんじゃないかなぁ。

世武 観て良かったし、ここでしゃべれたのも良かったし、なんか超良かった。

小出 語り甲斐がありました。映画のあとは、ぜひ原作を読んでみてください。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

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レイジくん、結婚おめでとう!

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