whiteeeen、さユり、チコハニ、さよポニ……10代に人気のアーティストはなぜそのビジュアルを2次元にするのか?

GReeeeNの妹分としてデビューした10代4人:whiteeeen

12月14日に1stフルアルバム『ゼロ恋』をリリースし、メンバーのkanaとnoaが新曲「ゼロ恋」に合わせたキュートな“ゼロ恋ダンス”を動画で公開、みんなが踊る“ゼロ恋ダンス”動画を募集中のwhiteeeenが話題を呼んでいる。知らない人はぜひ動画を観てほしいのだが、ダンスをしているメンバーの顔がイラストフェイスになっているのにドキリとするはず。

昨年、GReeeeNの妹分としてデビューし、今年は映画「青空エール」の主題歌に「キセキ~未来へ~」が起用されて人気急上昇中の全員10代4人のwhiteeeenは、メンバー全員のビジュアルが今までずっとイラストで表現されてきている。アーティスト写真もイラストなら、「ハンブンコ」「恋のテンキヨホウ」「愛唄~since 2007~(whiteeeen Ver.)」のミュージックビデオにもイラストビジュアルで出演。素顔を見せないファンタジックでミステリアスな展開も、注目の的となっている。

クリエイター集団が楽曲提供と音楽プロデュース:CHiCO with HoneyWorks

……と思いながらシーンを見渡すと、whiteeeenに限らず、今注目を集めている女子アーティストには、イラストをアーティスト本人のビジュアルとしていることが多いと気付く。例えば“チコハニ”の愛称で知られるCHiCO with HoneyWorks。

テレビアニメ「アオハライド」のオープニングテーマ「世界は恋に落ちている」やテレビアニメ「銀魂」のオープニングテーマ「プライド革命」などのヒット曲で知られるチコハニは、ミュージシャンGom、shitoのふたりとイラストレーター・ヤマコによるクリエイター集団・HoneyWorksが楽曲提供と音楽プロデュースを手がけ、ボーカリストCHiCOのアーティストビジュアルをすべてヤマコのイラストで表現。ライブに行かないとCHiCO本人には直接会えないという、ユニークな展開でも人気を集めている。

今年は春に公開されたHoneyWorks原作の劇場版アニメ「ずっと前から好きでした。~告白実行委員会~」オープニングテーマ「恋色に咲け」もスマッシュヒットを飛ばしている。

リリカルでキュートな楽曲と色鮮やかなミュージックビデオ:さよならポニーテール

昨年からレーベルをT-Palette Recordsに移し、これまでに一度もライブを行わないことでも話題となっている“さよポニ”ことさよならポニーテールも、(実際はメンバーが10人以上いるのだが)みぃな、あゆみん、なっちゃん、ゆゆ、しゅか、5人の主要メンバーのビジュアルは、インディーズ時代からずっとイラスト。

「円盤ゆ~とぴあ」や「光る街へ」のミュージックビデオが、アニメのスタッフロール風の演出になっているのも最近のさよポニの特徴だ。存在自体が謎めいているだけでなく、リリカルでキュートな楽曲やカラフルなミュージックビデオ、ネット上でしか活動しないというトリッキーなヒストリーも人気の秘密だろう。

2.5次元パラレルシンガーソングライター:さユり

12月7日にRADWIMPS・野田洋次郎の楽曲提供&プロデュースによるニューシングル「フラレガイガール」が話題を呼ぶ、今最も旬の女子アーティスト“酸欠少女”さユりも、イラストビジュアルをふんだんに採り入れて話題と人気をかっさらってきたひとりだ。

昨年メジャーデビューし、「ミカヅキ」「それは小さな光のような」など立て続けにヒットを飛ばしている彼女は、「人と違う感性・価値観に、優越感と同じくらいのコンプレックスを抱く“酸欠世代”の象徴」であるさユりの人格を、3人に分裂したイラストと、実写の酸欠少女さユり本人をミックスしながら表現し続けてきた。

特に2次元イラストで描かれているキャラクターはなかなか複雑で、「さユりの後悔の念が生んだ 永遠の14歳」である“さゆり”、天使・死神・天邪鬼の3つの姿を持つ“サユリ”、“さゆり”が意思を示したときに本能キャラとして表れる“サゆり”と、何人ものパラレルな彼女がミュージックビデオにも登場。“2.5次元パラレルシンガーソングライター”としての新しいフィールドを確立している。

なぜ2次元のイラストビジュアルなのか?

それにしても、なぜ注目の女子アーティストたちは、あえて写真ではなく2次元のイラストビジュアルを届けるのか。しかも彼女たちの存在と作品は、なぜどれも多くのファン――特に10代、20代の若者たちの心を掴むのだろうか。

その理由のひとつは、それぞれのアーティストがもつ世界観全体を、歌だけではなく、ビジュアルも含めて丸ごとしっかり伝えたいというクリエイティブな意思があるからだろう。

whiteeeenやさよならポニーテールなら、作品が描き出す多感な10代の思いを、等身大かつビビッドに伝えるため。CHiCO with HoneyWorksなら、ずっとアニメーション的なストーリーで作品を伝えてきたHoneyWorks楽曲の世界観を、CHiCO本人がキャラクターのひとりになりきって体現するため。そしてさユりは、さユり自身の歌世界に存在するカオティックなキャラクターのすべてを表現するには、本人自身のビジュアルでは足りなさすぎるのだろう。

もうひとつ、アーティストにとっては、今は歌だけでなく、「ネットでビジュアルやイメージ観せること」がとても重要な時代だからだろう。特に、今回挙げた女子アーティストたちは、その多くがインターネット動画やメディアから人気に火がついた人たちばかり。その背景には、絵のクオリティにこだわった物語性の高いミュージックビデオで音楽シーンを揺るがした、ニコニコ動画発のボーカロイド曲ブームがあるはずだ。

初音ミクブームが巻き起こっていた2010年代前半、小中学生だった音楽ファンにとっては、イラストやアニメ、CGキャラクターが歌を表現し、そこにどっぷりと感情移入するのは当たり前のこと。生のアーティスト本人と2次元キャラクターの両方をパラレルに横断することに、まったく違和感はないばかりか、むしろ「2倍楽しめてうれしい!」くらいの感覚がありそうだ。

さよならポニーテールのメンバー・クロネコが昨年、レーベル移籍の際に発表したオフィシャルコメントに、“さよポニは今まで以上に「自由」で「謎」な活動スタイルを維持していくために~”という一文があった。

生身のアーティスト本人が実現できないことも、2次元キャラクターならなんでもできる。多様性と自由。そしてちょっとしたミステリー。より多彩でファンタジーな世界表現に挑戦したい、感性豊かでセンシティブな女子がイラストでアーティストビジュアルにこだわるのも納得だ。

実際、今までにないユニークで興味深い活動を繰り広げている人材も多い。今後も増えていきそうな、イラストビジュアルアーティスト。ぜひ注目していきたい。

 TEXT BY 阿部美香


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