ゆら帝、THE BAWDIES、ドレスコーズを輩出した“アンダーグラウンドロックの総本山”

東高円寺のU.F.O.CLUBというライブハウスが、2016年1月27日をもって20年目を迎えた。

メトロの突風が吹き抜ける丸ノ内線東高円寺駅から徒歩2〜3分。もしくはバンドマンと居酒屋の喧噪でにぎわう高円寺駅のガード下から徒歩15分。トラックの走行音以外は不気味なほどに静かな環七通り沿いをまっすぐ進むと、コンビニの明かりがまぶしい四叉路にぶち当たる。

学習塾ののぼりと中華料理屋のくすんだ窓の間でひっそりと光る“DJ’S BAR”という謳い文句の看板を横目に、緑色の電灯に瞬きを繰り返しながら階段を下りて重い扉を押し開け、風圧の生まれそうな爆音に目を細める。

1996年1月27日、オープニングを飾った出演者のうちの1組は、メジャーデビュー前のゆらゆら帝国だった。

特色のひとつとしてしばしば取り上げられるサイケデリックな内装は、同バンドのフロントであった坂本慎太郎が手掛けたものだ。赤と黒で彩られた意匠は悪魔の胃袋の中に滑り落ちたような錯覚に陥るほど鮮烈で、様々なアーティストがミュージックビデオの舞台として使用している。

当初はクラブ寄りの営業スタイルで、夜毎DJがレコードに針を落とし、90年代のメインストリームである渋谷系からは外れたガレージ、和モノ、モンド、サイケといったジャンルの楽曲を再生した。

イベント自体は週末のオールナイトかつ、持ち込み企画限定だった。それがいつ“アンダーグラウンドロックの総本山”と評されるスポットへと変貌を遂げたのか、また誰がそう言い出したのか、ただのひとりも把握していない。

たしかに、元CANのダモ鈴木が初の日本ライブを敢行したとか、アシッドフォークの重要人物であるサイモン・フィンやマーク・フライの来日公演を開催したとか、おとぎ話やクウチュウ戦や余命百年が活動初期から出演しているとか、国内外問わずアンダーグラウンドミュージックを支持するリスナーが口角を上げそうなエピソードには事欠かない。

だがその一方で、毛皮のマリーズ解散直後の志磨遼平がドレスコーズの結成をサプライズ発表したとか、2014年にTHE BAWDIESがファンクラブ限定イベントを行った際にROY(vo、b)が「思い出の場所」と語ったとか、2015年にはScoobie Doが18年ぶりに登場したとか、メジャーシーンにおいても無視できないトピックも知らず知らずのうちに量産している。

“先見の明がある”と言ってしまえば簡単な話だが、いざその辺りを指摘しても「育ててない、勝手に売れただけ」と首を振るばかりなので、もはや“メジャー/マイナー”だとか“アンダーグラウンド/オーバーグラウンド”などの境目を探すこと自体が野暮に思えてくる。

そこにただ音楽があって、たまたま立ち会った我々が好き勝手に名前を付ける。名付け親がどこを向くかで何もかもが変わってしまうというだけのことで、合わせ鏡のように映るもの自体は同じなのだと。

2016年1月。“20周年記念月間”と銘打たれたこの1ヵ月は、実にあらゆるミュージシャンが集った。クリトリック・リスと鳥肌実というエキセントリックな組み合わせも、おとぎ話とドレスコーズが久々に対峙した夜も、アナログフィッシュが初出演した日もあった。

それは、何にもとらわれることなく淡々と“面白いと思うことだけ”を発露させるきっかけとして、あるいはその受け皿としての姿勢を貫いたことへの祝福として、何よりも理想的な形であるように感じられた。そういった場所に束の間でも迷い込めることも。

この瞬間を“奇跡”と呼ぶのは少しだけ恥ずかしいので、今夜も隠れるようにして地下に潜る。プリズムのようなミラーボールの光に体中を穴だらけにされながら。

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